エッチング加工

エッチング加工とは

エッチング加工は、酸やアルカリなどの薬液で腐食を行う加工方法で、15世紀中ごろのヨーロッパにて発明されていた古くからある加工技術です。

芸術において版画の1つであるリトグラフなど、アルミ板や銅板を溶かして製造していました。同じ原理を利用して電子工業、精密機械工業、印刷工業などのあらゆる分野で基礎的な技術として応用される技術です。

電気回路の配線に使われるプリント基板の基材は、絶縁物である紙フェーノールやガラスエポキシ板に銅箔を張り合わせたものです。マスキングテープや油性のマジックインキで配線パターンを描画し、不要な部分を腐食、溶解して回路配線を作ります。

このような主にプリント基板製造、金属銘板製造の分野において多く使われています。産業用精密部品にも応用され半導体素子製造等、金型を使うことなくミクロンレベルの精度で加工できる、ステンレスや銅等の金属材の複雑・精密加工に適しています。

エッチングの種類

エッチングの種類には、ウェット加工とドライ加工があります。使用する溶剤が異なりますが、どちらも化学反応を利用したエッチング方法です。

ウェット加工は、溶液に浸して腐食させるのに対し、ドライ加工は真空装置内で、ガスをプラズマ化し、化学反応により発生したイオンで膜を腐食させる方法です。また、それぞれに等方性エッチングと異方性エッチングがあり、腐食方向の性質が異なる事を言います。

等方性は、縦・横どの方向も同じように削れるエッチングで、縦・横同じ量が削られます。一方異方性エッチングは縦・横方向によって腐食速度の違いを利用したものです。横方向は削られる量が小さくなります。

・等方性エッチグ:縦・横同じ量削られます。
・異方性エッチング:縦・横削られる量が異なります。
・ウェットエッチング:酸あるいはアルカリなどの化学溶液を用います。
・ドライエッチング:ガスを用います。

様々な利用用途によるエッチング

金属薄板加工

一般的に金属薄板の加工は、プレスやレーザーにて行います。それに対し、エッチング加工は、加工形状を材料にマスキングし、不要部分を腐食液で除去する加工方法です。他の加工方法と比べると、多数個が同時に加工でき、量産性が良い事やバリ・歪み・カエリ・加工硬化のない高精度加工が可能です。また物理的制約に捕らわれない加工です。

電子回路

パソコンやスマートフォンなど電子機器の部品を実装、はんだ付けし配線するのにプリント基板が使われています。その回路配線を加工するため、導体(主に銅箔)を除去するための工程としてエッチングは用いられています。感光性耐薬品皮膜(フォトレジスト)をマスキングとして用いてエッチングを行います。

樹脂めっき

樹脂成形品表面に金属光沢を、耐水性、耐候性などの機能性を付与する目的で、めっき加工を行っています。電気を通さない樹脂にめっきをする方法でエッチング技術が用いられます。樹脂を浸漬させ、凹凸のある表面したものにパラジウムなどの金属を吸着させたものでそこに処理をし、無電解めっきを行います。

版画・印刷

西洋美術の世界では、もっとも多く用いられた版画・印刷技法であり、ルネサンス期以降、銅を版材とする銅版画においてエッチングによる製版技法が開発されました。防食処理を施した銅板の表面を針で削り、その後腐食させることで凹版を製作します。

エッチングのメリット

非接触の加工の為、変形、バリ・歪み・カエリ・加工硬化のない高精度の加工が可能です。

・打抜き加工のような物理的制約がありません。
・プレス加工のように高価な金型が不要で、初期費用を大幅削減できます。
・短納期での製造・出荷ができるので、試作品に最適です。
・複数同時に加工できるので、量産にも適応可能です。

プレス・板金加工

プレス・板金加工とは

板金加工とは、板材を板面方向に変位させて成形する加工法のことです。金型を用いたプレス加工やタレパン加工、レーザー機によるレーザー加工など、その工法は幅広く存在します。モノマド辞典では、プレス・板金加工の各工法について詳しく解説していきます。

  • エッチング加工は、酸やアルカリなどの薬液で腐食を行う加工方法で、15世紀中ごろのヨーロッパにて発明されていた古くからある加工技術です。芸術において版画の1つであるリトグラフなど、アルミ板や銅板を溶かして製造していました。同じ原理を利用して電子工業、精密機械工業、印刷工業などのあらゆる分野で基礎的な技術として応用される技術です。
  • 板金加工とは、板材を板面方向に変位させて成形する加工法のことです。金型を用いたプレス加工やタレパン加工、レーザー機によるレーザー加工など、その工法は幅広く存在します。モノマド辞典では、プレス・板金加工の各工法について詳しく解説していきます。
  • 絞り加工とは、板金・プレス成形加工の1つで、1枚の薄板から円筒、角筒、円すいなど底の有る凹形の容器を作る加工方法です。成形加工品につなぎ目が無い事が一番の特徴です。鍋、フライパンなどを思い浮かべるとイメージできると思います。
  • タレパンとは、タレットパンチプレスの略称で、金属の板を撃ち抜いて加工する方法のことをいいます。事務用品で紙に穴を開けるパンチのような仕組みで、タレットと呼ばれる金型のホルダーに撃ち抜く形状をした金型を配置して成形していきます。
  • 水を加圧し小径ノズルから噴射、超高圧水が物体にぶつかるときに発生するエネルギーを利用してワークを切断する加工法です。300〜600MPaに達する圧力の水を直径φ0.05〜2.5㎜の極小径の穴を通す事により、音速(空気中で約330m/s)の3倍、破壊力のあるウォ—タ—ジェット(WJ)を発生させます。
  • プレス加工とは、パンチ(雄型)とダイ(雌型)1対の金型で材料をはさみ、加圧して穴あけ、切断、曲げ、伸ばし、絞り成形し、その形を永久に維持する加工方法のことです。加圧する機械をプレス機と呼び数トン〜数千トン(tF)と大きな力が加えることが出来ます。
  • 溶接加工とは、2種類以上の金属を接合する金属加工方法のことをいいます。定義上では材料に応じて接合部が連続性を持つように「熱」または「圧力」を加え、必要によって溶加材を加えて接合する方法となっています。
  • シャーリング加工とは、板金の素材を任意のサイズに切断する機械のことで「せん断機」とも呼ばれています。上刃と下刃が付いており、原理は日用品のハサミと同じです。といっても強固な刃が取り付けられているため、鉄やアルミ、ステンレスなどの金属も一瞬で切断することができます。基本的に上刃には角度が付いており、この角度が付いているため直線的に切断することができます。
  • レーザー加工とは、板金にレーザー光線を照射して穴あけや切断を行う加工のことです。光を1か所にレンズで集めると、極めて高いエネルギーの光が得られ、その光の熱により穴あけや切断などの加工が可能になります。「光の熱で金属を焼き切る」と想像するとわかりやすいと思います。直進性が強く広がらないという性質(指向性)を持っています。

絞り加工

絞り加工とは

絞り加工とは、板金・プレス成形加工の1つで、1枚の薄板から円筒、角筒、円すいなど底の有る凹形の容器を作る加工方法です。成形加工品につなぎ目が無い事が一番の特徴です。鍋、フライパンなどを思い浮かべるとイメージできると思います。絞り加工は、板金・プレス加工の中でも難易度が高く、形状、設備、成形条件を考慮し適正にしなければシワ、ヒズミ、ワレなどが発生し不良の原因になってしまいます。

絞りの原理

絞り加工の原理は、金属材料に力を加え変形させ、力を取り除いた後も変形が残る材料の性質(塑性)を利用して、成形することです。成形したい形の凹みをもつ下側の金型(ダイ)と、そこに沈み込む上側の金型(パンチ)がペアになって、一枚の板に圧力を加え成形します。シワ抑え板であるブランクホルダーとダイの間に板材を挟み押し付けた後、パンチが降下して板に圧力をかけます。そしてパンチの下端部の形状に従って板が変形し、ダイの空間内部に押し込まれます。更にパンチの降下が進むとブランクホルダーで抑えられていた周辺部がダイの穴の中へ引き込まれていき、成形が行われます。

1回に絞れる径、深さには限界があるため、目的の形状になるまで複数回繰り返す場合があります。また、繰り返すにつれ、材料は加工硬化して絞りづらくなる事を覚えておいて下さい。

絞り加工の特徴

板材を、数秒で形成することができますので絞り加工には、様々なメリットがあります。

工数の削減

切削、溶接をせずに目的のる形状に加工することが可能ですので、加工自体の工程数を削減することができます。念入りな金型作成、事前の細かい計算が必要となりますが、大量生産に非常に向いている加工です。

高い品質

金型と機械のバランスが上手くとれている必要がありますが、製品の品質を損なう傷やひずみ、シワがない加工が可能です。事前の念入りな準備、そして高い技術が必要となります。
また、切削も溶接も行いませんので、素材に加わるダメージが非常に少なく、丈夫な仕上がりも期待できます。

加工効果が大きい

変形量が非常に大きい加工な為、薄い板材でも丈夫な製品を製造することが可能です。のため、大きい加工硬化が期待できます。この性質を上手く利用すれば、製品の軽量化を図ることができます。

絞り加工の種類

絞り深さによる分類では、浅絞り、深絞りの2種類があります。仕上がった製品の直径に対して製品の深さ方向が短い浅絞り加工、長いものを深絞り加工としています。例を挙げれば、灰皿やフライパンのようなものを浅絞り、ズンドウ鍋が深絞りです。深絞りは、1回目の絞り(初絞り)の後、再絞りを複数回繰り返して目的の深さまで加工します。

形状で分類すると次に挙げる6種類です。

1、円筒絞り加工
フライパン、なべ等、円筒形をした底付き凹形状に成形する場合の最も基本的な加工法です。

2、角筒絞り加工
台所のステンレス製シンクや浴室のバスタブのような四角凹形状に成形する加工法です。

3、異形絞り加工
その他、自動車の車体パネルに使用されるような複雑な形状に成形する加工法です。

4、円錐絞り加工
絞りの側面がテーパー状になっている円筒形状に成形する加工法です。

5、角錐絞り加工
絞りの側面がテーパー状になっている四角筒形状に成形する加工法です。

6、球頭絞り加工
容器の底が平らではなく半球状となっている形状に成形する加工法です。

普段の生活で見る絞り製品

製品にはキャップ類、ボトル容器、アルミ缶、灰皿などの小さな物からエンジンのヘッドカバーやキッチンシンクなど大きな物まで様々なものがあります。

2重ビアタンブラーをご存知でしょうか?このタンブラーは、薄いステンレスや銅合金の板材を複数回絞り加工しています。外側、内側と別々に加工した2つの凹形状を嵌め合い、組み合わせて溶接して作られています。合わせ目が判らないほどきっちり出来ているのに驚かされます。

タレパン加工

タレパン加工とは

タレパンとは、タレットパンチプレスの略称で、金属の板を撃ち抜いて加工する方法のことをいいます。事務用品で紙に穴を開けるパンチのような仕組みで、タレットと呼ばれる金型のホルダーに撃ち抜く形状をした金型を配置して成形していきます。

タレパン加工には、1つの金型をセットできるものと、複数の金型をセットできるものがありますが、多くは後者の複数の金型をセットできるものが使用されています。複数の金型をセットできるものは金型の交換が自動でできたり、複雑な打ち抜き加工ができるようにNC制御(プログラム)が用いられています。

また、タレパン加工機はNC制御を用いれば高い加工精度を安全に出せることに加え、正しく使用すればかなり長持ちする機械でもあります。そのため金属の板を大量に加工する製造工場での打ち抜き工程では、必要不可欠な加工方法ともいえるでしょう。

タレパン加工とは

タレパンの特徴

多くのタレパン加工機はNC制御のため、あらかじめプログラムされた内容に沿って金型の選定や板材の条件を把握して加工できるため、これまで熟練の作業者しかできなかった加工精度も簡単に出すことができます。

また、金型を組み合わせて追い抜き加工(ニブリング加工)をすれば専用の金型がなくても円弧状や微妙な角度の加工もできる特徴があります。

タレパン加工の特徴

タレパン加工機の金型は長く使用していると磨耗によってダレやカエリ(加工面の凹凸)ができるため、定期的にパンチ部分を研磨機で磨く必要があります。しかしプレス可動部は清掃と注油のみの簡単なメンテナンスで済むため、加工機械の中では比較的管理が楽というメリットがあります。

さらにタレパン加工機に材料の自動供給装置や取出機をセットすれば自動で連続加工も可能ですので、精度が求められる製品を大量生産できるというメリットもあります。そのため大幅な工数削減につながるため、コスト削減にも貢献できるといっても過言ではありません。

タレパン加工の金型

万能に見えるタレパン加工ですが、一方でデメリットともいえる特徴もあります。

まずタレパン加工は硬い金属を撃ち抜く加工方法のため、加工できる素材の厚さは3mm程度が限界で厚板加工ができないという欠点があります。また加工に必要な金型を用意する必要があることや、タレパン加工ではX軸とY軸を制御して加工の位置や形状を決定しているため、NC制御のプログラミングソフトを理解できる人でないと加工できないなどの特徴もあります。

さらに新品のタレパン加工機は数千万円から1億円を超えるものもあり、非常に人気がある設備のため中古品でも値下がりしにくく、導入には相当なコストがかかります。

タレパンとレーザーの違い

レーザー加工もタレパン加工と同じような加工をすることができますが、生産された製品は必ずしも同じものとはいえません。

例えばタレパン加工では金型で金属を撃ち抜くため、材料の下方向にダレやカエリが発生してしまいます。しかしレーザー加工は文字通りレーザーを照射して板金を焼き切るため、ダレやカエリがない製品を作ることができます。

また、レーザー加工は金型を必要としないため、型交換をせずに複雑な形状の製品を作ることもできます。さらにタレパン加工では厚さの限界は3mm程度ですが、レーザー加工では3cmくらいの厚みの板でも加工することができます。

加工スピードの関しても大きな違いがあり、タレパン加工は適切な金型を使用すれば一瞬で撃ち抜いて目的の形状にすることができますが、レーザーは熱で焼き切るため加工スピードが遅いという欠点もあります。

主なタレットパンチプレスメーカー

タレットパンチプレス機は金属加工機械全般を製造販売する大手のアマダから販売されているものがもっとも有名です。アマダは金属加工機械の国内シェアトップを誇り、国内のみならず海外にも展開しているため、金型やアフターパーツも豊富で信頼できるメーカーともいえるでしょう。

また、工作機械を製造している村田機械というメーカーからも販売されており、プレス機構を油圧ではなくサーボシステムを採用しているのも特徴的です。

さらに板金加工機械を取り扱っているサルバニーニからも販売されております。サルバニーニのタレパン加工機はシャーリング複合システムも備えており、生産ラインでの導入に向けて開発されているのが特徴です。

ウォータージェット加工

ウォータージェット加工とは

水を加圧し小径ノズルから噴射、超高圧水が物体にぶつかるときに発生するエネルギーを利用してワークを切断する加工法です。

300〜600MPaに達する圧力の水を直径φ0.05〜2.5mmの極小径の穴を通す事により、音速(空気中で約330m/s)の3倍、破壊力のあるウォ—タ—ジェット(WJ)を発生させます。

まるで刃物の様に金属、ゴム、樹脂、コンクリートなどの対象物の切断が可能で、レ ーザ ーと並ぶ高密度加工のひとつとなっています。

ウォータージェットの歴史は、まだ80年程度と非常に浅いながらも、加工部に熱が加わらない最大の特徴を活かし、熱に弱い材料加工が可能です。

脆性材料や複合材料の加工を得意とするこの加工はセラミックなど先端、先進材料加工に期待が大きいと言われています。

手術などの医療用途や消防救護活動にも用いられています。ガソリン漏れで気化ガスが充満している火災現場で火花などによる引火を避ける為、東京消防庁や特別高度救助隊(ハイパーレスキューなど)を置く消防本部に配備されています。

ウォータージェット加工とは

ウォータージェット加工の特徴・利点

・非接触で材料への負担が少ない為、変形が少ないです。
・水流を細く出来る為、切断代(カーフ幅)が最小0.3mmと小さく精密加工が可能です。
・ノズルを傾斜させる事が出来る為、3次元形状加工が可能です。
・水による加工の為、歪み、変質、溶解せず、熱影響を受けやすい材料も加工できます。
・エネルギー密度が高く、局所的に作用する為、脆性材や複合材の加工に最適です。
・ワイヤーカットと異なり任意点から加工開始出来る為、自由な形状にカットが可能です。
・レーザー光の焦点距離と異なり有効加工範囲が大きい為、厚板加工が可能です。
・バリ、反り、ダレが無く直角に切断可能です。
・切りくずが舞う事が無く非常にクリーンな環境で加工できます。
・水は比較的管理がしやすい為、コストを安く抑える事ができます。

ウォータージェット加工の種類

ウォータージェット切断加工

ウォータージェットだけで切断する加工方法。ゴムや発泡材、不織布などの軟質材加工向きです。

アブレシブジェット切断加工

ウォータージェットの切断能力を高める為、ウォータージェットに研磨材(Abrasive(英):アブレシブ)を混入させて切断する加工方法。金属、ガラス、宝石、ダイヤモンドなど硬質材加工向きに改善されたものですが、ランニングコストが高い、騒音がかなり大きい、研磨剤の後処理に費用がかかる、切断代(カーフ幅)が、0.7mm-1.5mmと広くなってしまうなどデメリットもあります。

あらゆる材質の加工に対応

ウォータージェット加工は、あらゆる材質の切断加工が可能です。

CFRP(炭素繊維複合材)やGFRPなどの各種複合材、インコネルやチタンを始めとする難加工金属、各種セラミックス、断熱材など一般的には加工が難しいとされる材質においても対応できます。

難加工金属は、レーザー加工など他の加工では、熱影響部が残存すると性質を損う為、グラインダー等による仕上加工の必要がありました。切断面に熱影響が少ないウォータージェットでは、必要がありません。

また、熱 による酸化や溶融 による変色もなく、切断のままでもかなりの仕上り状態になっています。また、硬度は高いが脆く、一般的に電気を通さない絶縁物であるセラミックスは、放電加工などでは加工が非常に困難ですがウォータージェット加工は加工が可能です。

ウォータージェット加工イメージ図

最後に、切断可能な加工材料の一部を掲載します。

・金属:アルミ、ステンレス、鉄鋼、インコネル、タングステン、チタン、ニッケルなど
・セラミックス:SIC、高純度アルミナ、ボロンカーバイト、窒化ケイ素、フェライトなど
・樹脂:ABS、PE、ナイロン、アクリル、塩ビ、ゴム、スポンジ、ウレタンなど
・複合材:CFRP(カーボン繊維複合材)、GFRP(ガラエポ)など
・その他:ガラス、石、タイル、レンガ、家電品、携帯電話、各種アッセンブリー品

プレス加工

プレス加工とは

プレス加工とは、パンチ(雄型)とダイ(雌型)1対の金型で材料をはさみ、加圧して穴あけ、切断、曲げ、伸ばし、絞り成形し、その形を永久に維持する加工方法のことです。加圧する機械をプレス機と呼び数トン〜数千トン(tF)と大きな力が加えることが出来ます。

今から200年以上前の1795年には水圧を利用したプレス加工が行われていました。プレス加工は他の機械加工と比べ短時間で加工できるので生産性が高く、連続加工も可能であることから大量生産に向いています。

産業の発展に大いに貢献してきた加工方法と言えます。自動車、家電、産業機器において、プレス加工によって製造された部品の多くが筐体やフレームなど構造要素としても用いられており、モノづくりの世界で大活躍しています。

プレス加工の大きな特徴を挙げると次の通りです。

・材料は主に金属です。
・プレス機に金型をセットして加工します。
・金型で材料をはさみ大きな力を加えます。

金型とは

材料に上方向から力を加えて、穴あけ、切断、曲げ、伸ばし、絞り行い目的の寸法に成形、保持する工具の事をプレス金型と言います。

大きく区分すると単発型、順送型、トランスファー型の3種類です。

単発型

プレス機が上下に動く1ステージ1つの工程のみ加工を行うためのプレス金型です。人が手でプレス機を動かし、材料を供給して作業することを前提に作られた金型で、自動化などはされていません。

順送型

1つの金型の中に複数の工程を均一に配置し、ステージ毎にワークを順次送って加工する金型です。材料は、ロール材を使いレベラーなどで平らにして供給します。人の手による材料のセットが不要ですので大量生産向きですが、金型が複雑になるので初期費用が大きくなります。

トランスファー型

ワークを順に搬送(トランスファー)していくことで自動加工を実現したもので、基本は単発型と同じです。ワークの金型間の移動は、搬送装置で送っていくため、人の手を使わずに自動でワークが次の工程に流れます。

プレス金型のイメージ図

プレス加工のメリット・デメリット

プレス加工のメリット・デメリットは次の通りです。

メリット

・大量生産向き
・品質の安定

一度金型を作ってしまえば、安定した品質の製品を大量に作ることができますので、プレス加工のメリットはなんといっても大量生産に向いているということです。

熟練した職人でなくてもばらつきがでない、作業の質を一定に保つことができます。

デメリット

・形状の制限がある
・初期費用が高価

プレス加工には、物理的制約がある為、成形できる形状に制限があります。どんな形状にも加工できるわけではなく制約にのっとって設計する必要があります。これには、設計経験を積むなど技術の学習が求められる分野と言えます。

また、金型製作が高価になるデメリットがあります。単発型でも、工程数によっては十数万円から百数十万円。順送型で数百万円の金型製作費が必要となります。

設計変更による金型の改造費も発生してしまう為、板金加工で繰り返し試作を行い金型改造しなくて良いよう見極めが必要となります。

プレス加工の種類

プレス加工は、弾性と塑性、加工硬化、加工前後体積一定これらの3つの原理の組合せですが、代表的な加工の種類を挙げますと次の通りです。

せん断加工

せん断加工とは、板状の材料を上から加圧プレスして、完全に切断し分離する加工法のこと。切り抜いたり、外形を抜いたり、穴をあけたりすることもこの加工法に含まれます

曲げ加工

プレス金型で材料を曲げる加工法のことを言います。板状の材料をプレスし、被加工材の引張り力と圧縮力を利用して、材料を曲げるものです。曲げた鋼板がわずかに戻るスプリングバックを考慮して金型を設計する必要があります。

絞り加工

板状の材料にプレス機で圧力を加えパンチとダイに沿った形状にする加工法のことを言います。身近な例では、鍋やスマートフォンのバッテリーパックなどの加工で底があるコップ状容器に形状になります。

プレス加工の種類

普段の生活の中のプレス加工品

・自動車の車体(ドア、ボンネット、フレーム、フェンダー、ホイルなど)外装部品
・家電筐体(外装)部品、内部の構造物(フレームなど)
・電子機器(HDD構造部品、パソコン筐体、フレームなど)
・生活用品(鍋、スプーン、フォーク、ナイフなど)
・建築資材(ドアノブ、天戸、物置など)

溶接加工

溶接加工とは

溶接加工とは、2種類以上の金属を接合する金属加工方法のことをいいます。定義上では材料に応じて接合部が連続性を持つように「熱」または「圧力」を加え、必要によって溶加材を加えて接合する方法となっています。

溶接加工とは

溶接法の分類

溶接の方法は、主に材料によっては接合する金属の一部を溶融、または半溶融状態になるまで加熱したり、加熱させた金属を加圧して接合する方法、さらに母材と異なる材料を溶融して接合する方法と3つに分類されます。

具体的にどのような方法なのか見ていきましょう。

溶接法の分類修正

溶融法

溶融法

溶接しようとする部分を加熱し、母材や溶加材を融合させて凝固させる接合方法となります。もっとも一般的な溶接方法で、母材を溶融させることでひとつのものにできるため、強度が優れているという特徴があります。

生産現場では溶接条件が管理された産業ロボットが用いられている場面もあるものの、複雑な形状であれば人の手で溶融池や溶け込み量を確認しながらおこなうことがほとんどです。そのため職人的な技術が必要なほど奥深い溶接法でもあります。

圧接法

圧接法

金属の接合部分を摩擦や爆発によって加熱し、そこに圧力を加えて接合することを圧接法と呼びます。元は「加圧溶接」の略で、別名「固相接合」ともいわれています。接合部を機械的圧力で接合するため数値制御が可能で、全自動生産ラインやなどの大規模な生産現場で多く用いられています。

圧接方法には、ガス圧接や摩擦圧接、抵抗溶接などがあります。また、自動車のボディの接合方法は「スポット溶接」と呼ばれる圧接方法が用いられているのも有名です。

ろう接法

ろう接法

溶接する母材を溶融するのではなく、母材より融点が低い溶加材と呼ばれる「ろう」を溶融させて接合する方法です。金属の接着剤で接合するイメージともいえるでしょう。

ろうは母材に落ちると毛細管現象で接合面の隅々に行き渡るため、母材自体を結合していなくても強固に固定することができます。また、硬ろうを使用する「ろう付け」と融点の低い軟ろうを使用する「はんだ付け」の2種類に分けることができます。

一般的な溶接方法の紹介

3つの溶接法を用いて様々な溶接方法の中から、一般的に使われることが多い溶接方法をご紹介していきます。

被覆アーク溶接

被覆アーク溶接

古くから用いられる溶接方法で、手作業でおこなうのが主流ですので、「手溶接」とも呼ばれています。母材と同じ材質の金属棒を電極として、母材と芯線の間に形成されるアークを利用して熱を発生させ溶接します。

芯線を覆っている被覆材から発生するガスや、溶接後に発生するガラス状のスラグで溶融池を覆うため、外部条件の影響を受けにくいという特徴があります。そのため建設現場などでも取り入れられている溶接方法です。比較的安価な設備で使えるというメリットもあるため、溶接といえば被覆アーク溶接のことをさすことも多いようです。

自動(半自動)アーク溶接

自動(半自動)アーク溶接

トーチと呼ばれる器具から自動で針金状の溶接ワイヤーの電極が供給され、ワイヤと母材の間に発生したアークの熱で溶接していきます。ワイヤは溶けてなくなり、送給装置によって自動で送給されますので、自動(半自動)と呼ばれています。

トーチからは溶融部分を大気から遮断させるために「シールドガス」と呼ばれる不活性ガスを供給しています。シールドガスに不活性ガスのみを供給するMIG(Metal Inert Gas)溶接や、不活性ガスに炭酸ガスを混合するMAG(Metal Active Gas)溶接があります。

TIG溶接

TIG溶接

不活性ガス溶接の一種で、「Tungsten Inert Gas」からTIG溶接と呼ばれています。火花を飛ばさないアーク溶接として様々な金属製品の製作に用いられています。

放電させる電極にタングステンを使用することで電極を消耗することがなく、シールドにはアルゴンガスやヘリウムガスが使用されます。不活性ガスの中で発生したアーク熱で母材を溶かして溶接しますが、溶接部分が不活性ガスで覆われているため、スパッタと呼ばれる火花はほとんど発生しません。

そのため接合面が非常に綺麗に仕上がるため、オートバイの部品など見える部分や工芸品の製作にも用いられます。

スポット溶接

スポット溶接

溶接材同士を重ね合わせたところにチップと呼ばれる電極で挟んで加圧し電極間を通電させ、その際に発生した電気抵抗で発生した熱を使って溶融接合させる方法です。

通電によって瞬時に熱を発生させるため、作業効率が非常に良く自動車の製造ラインの接合工程などで幅広く使用されています。また、溶接点を連続的に繋げるシーム溶接や、突起部を集中的に発熱させて一部分を接合させるプロジェクション溶接もスポット溶接の一種です。

レーザー溶接

レーザー溶接指向性や集中性が優れている波長の光をレンズで集めてエネルギーの密度を高め、非常に高温な熱源を作ることで加工物を溶接する方法です。レーザーの指向性や集中性を調整することができるため、深さに対して幅の狭い溶け込みを与えられたり、薄板であれば切断することも可能です。

また、レーザー溶接は炭酸ガスなどの気体を使用して光を取り出す「気体レーザー」や、アルミニウムや鉱石を使用した「固体レーザー」と呼ばれる方法があります。

ロウ付け

ロウ付け

接合する母材の間に「ロウ」と呼ばれる母材と比べて融点が低い溶加材を加えて浸透拡散、冷却して凝固させる溶接方法となります。母材自体を溶融させるのではなく、ロウを接着剤のように使用するため母材を傷めることがありません。

異なる金属同士も接合することができるため、パイプの接合やアクセサリーの製作にも用いられています。もっとも最古の接合技術ともいわれており、奈良の大仏やエジプトの文化遺産もこの方法で接合されているともいわれています。

シャーリング加工

シャーリング加工とは

シャーリング加工とは、板金の素材を任意のサイズに切断する機械のことで「せん断機」とも呼ばれています。上刃と下刃が付いており、原理は日用品のハサミと同じです。

といっても強固な刃が取り付けられているため、鉄やアルミ、ステンレスなどの金属も一瞬で切断することができます。基本的に上刃には角度が付いており、この角度が付いているため直線的に切断することができます。

一瞬で金属を切断できるシャーリング加工をおこなうときは危険も伴う作業であるため、シャーリング加工機にはいくつもの安全装置が取り付けられています。

シャーリング加工機の種類

シャーリング加工機は板金素材の大きさや板厚、作業効率によって最適なものを選ぶ必要があります。ここではメカ式と油圧式についてそれぞれご紹介していきます。

メカ式

切断する刃を動かす機構が機械式のものを「メカ式」と呼びます。機械式シャーリングとも呼ばれ、加工速度が速いという特徴があります。また、機構が単調でメンテナンス性にも優れているのもメリットです。

一方で厚板の板金には対応していないものが多く、6mm以上のものを切断するのには向いていません。さらに加工音が大きいのもウィークポイントで、長時間の使用はかなりの騒音問題となることも考えられます。

油圧式

切断する刃を動かす機構が油圧のものを「油圧式」と呼びます。油圧で刃を動かすため、板厚が厚いものでも切断することが可能で、加工音もかなり静かです。

一方油圧機構は動きが遅く大量生産の際は非常に効率が悪くなることが多いというデメリットがあります。また、油圧機構は油漏れなどの不具合を起こす可能性もあるため、日々の油圧管理が欠かせません。

シャーリング加工機の違い

シャーリング加工機といっても製造メーカーも様々ですので、代表的なシャーリング加工機のメーカー別の特徴を見てみましょう。

アマダ

板金機械全般を取り扱う大手で、もっとも知名度があるメーカーです。機械式や油圧式だけでなく自動シャーリングなどといったシャーリング全般を取り扱っています。

相沢鉄工所

主に機械式シャーリングやプレスブレーキを取り扱っており、材料供給から切断加工、集積までを一体化した自動シャーリングシステムや、サーボモーターで駆動し作業効率が優れている「サーボシャーリング」も販売しています。

コマツ産機

板金機械全般を扱うメーカーで主に油圧シャーリングを販売しています。操作性が良く誰でも簡単にシャーリング加工ができるように作られているため、教育機関でも採用されています。

シャーリングカットの際に生じるバリ、ダレとは

シャーリングカットは上刃を加工物に押さえつけて切断するため、切断面の上部は押さつけられた跡で丸くなります。この状態を「ダレ」といい、先端が丸い形状になるため手で持ってもケガをする心配がありません。

一方反対側の切断面は上刃により加工物が引っ張られるような状態になるため、切断面は尖った状態になります。この状態を「バリ」といい、手で持つとケガをする可能性あります。そのためシャーリングカットをおこなったときは、バリが発生している面を磨きをかける必要があります。

また、ダレやバリの大きさはシャーリング加工機の精度に関係していますので、良い加工機ほど仕上がりが綺麗になるともいえるでしょう。

レーザー加工との比較

レーザー加工は板金など薄い素材を切断したり、表面にマーキングや彫刻も行うことができます。また、直線だけでなく複雑な形状も加工することができます。さらに切断面に誰やバリが発生しないため、面取りといった工程を短縮できます。

一見シャーリング加工機よりも優れている面しか存在しないように見えますが、レーザー加工は板厚が3mm以上のものはカットすることができません。また、加工の際はグラフィックソフトの知識が必要となりますので、レーザー加工は誰でも簡単にできる作業ではありません。

そのため、ある程度の厚板を直線的に切断する加工であればシャーリング加工を選択し、複雑な形状に切断したり彫刻をする加工であればレーザー加工を用いるといったように使い分けるといいでしょう。

レーザー加工

レーザー(切断)加工とは

レーザー加工とは、板金にレーザー光線を照射して穴あけや切断を行う加工のことです。

光を1か所にレンズで集めると、極めて高いエネルギーの光が得られ、その光の熱により穴あけや切断などの加工が可能になります。

「光の熱で金属を焼き切る」と想像するとわかりやすいと思います。直進性が強く広がらないという性質(指向性)を持っています。

レーザー(切断)加工とは

レーザー加工でできる製品

皆さんは、板金加工と言うと何を思い浮かべますでしょうか?自動車をぶつけた時など出来てしまった、傷やへこみを綺麗に修理する事を想像されるのではないかと思います。

しかし製造業では、異なります。製造業では、板金加工とは、金属の板に穴あけ、切断、折り曲げを行い目的の形状にする加工の事を言い、同じような加工にプレス加工があります。

図に示すように展開形状を作る過程は、プレス加工は、穴あけ型、外形抜き型それぞれの加工に金型が必要なのに対し、板金加工は汎用の抜き型(通称タレパン、英語: turret punchの略)やレーザー加工にて製作します。

私たちの生活の中、身近なところにレーザー加工を行う板金製品は使われています。

家庭用品:スマートフォン、エアコン、食器など
オフィス用品:パソコン、机・ロッカー、事務用品など
街角用品:信号機、看板、自動販売機、厨房設備など

多くのものに、レーザー加工の技術が応用されています。

レーザー加工の種類

レーザーは、媒体(電磁波の1つである光が伝播する場となる気体、固体、液体の事)と波長(赤外線、可視光線、紫外線などの分類があります。)によって区分けされ、色々な種類があります。

レーザー加工に使われるレーザー光線は、CO2レーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザーです。この3種類の方式にはそれぞれ特徴があり、加工に適した材料が異なっています。

CO2レーザー

波長:10.6μm
媒体:気体(炭酸ガス)
適した材料:木材、アクリル、ガラス、紙、布地、プラスチック、皮革、石材※金属の切断ができない。

YAGレーザー

波長:1.06μm
媒体:固体
適した材料:鋼材、アルミニウム、ステンレス、銅、プラスチック
※高出力で金属の切断が可能

ファイバーレーザー

波長:1.07μm
媒体:固体(光ファイバー)
適した材料:鋼材、アルミニウム、ステンレス、銅、プラスチック、セラミック
※高出力で金属の切断が可能。YAGレーザーより導入コストが高価ですが、より高速。

レーザー加工とタレパン加工の比較

穴あけ、切断を行う板金加工にはレーザー加工とタレパン加工があります。どちらも同じような加工ができますが工法による特徴があります。それぞれの特徴の比較は次の通りです。

レーザー加工

レーザー加工は、レーザー光を照射しその熱によって材料を溶かし切る為、金型が不要で複雑な形状の加工が可能です。

金型が不要なことから工具の交換にかかる時間が短縮できる反面加工時間が長く、ある程度の個数を製作してもコストが下がらないので量産向きではありません。

レーザーの焦点距離が最大3mm程度と短い為、厚板の加工には不向きです。

穴あけ、切断方法:レーザー光
制御方法:グラフィックソフト
最大加工能力:3㎜厚
※バリ、反りがない、ドロス除去仕上必要、試作向き

タレパン加工

タレパン(タレットパンチプレス)はパンチと言う上金型とダイと言う下金型ワンセットの汎用金型をタレットと言う円形ホルダに格納しプレスにセットして打ち抜き加工を行います。

NCプログラムにて必要な金型を選択し複雑な形状を高精度に仕上げられ、高速加工が可能です。十数万円から数百万円の初期費用をかけ、金型を作るほどの個数でなくてもある程度の数がまとまれば安価に製品の製作を行えます。

プレスの能力にもよりますが最大4.5mmの厚板まで製作が可能です。

穴あけ、切断方法:金型
制御方法:NCプログラミング
最大加工能力:4.5㎜厚
※バリ除去仕上必要、タレットに格納する金型の準備、段取りが必要。量産向き